日米が東シナ海で開始した大規模な合同軍事演習はどうやらその目的を果たすことができないようだ。演習は中国に対し当初日米が考えていたようなものとは全く異なるシグナルを送ってしまっている。
軍事演習は11月3日からスタートしたが、開始早々からスキャンダルを伴った。日米の軍人らが仮想敵国から向けられた弾道ミサイルの迎撃を行なった瞬間、演習海域に突如としてロシア太平洋艦隊、海軍の2機の航空機が現れたからだ。原子力潜水艦の発見、駆除手段以外にロシアのIL38機は電子モニタリングシステムを搭載している。IL38機が日米のレーダーの波を測定してしまうことを恐れ、演習は一時中断された。
ロシア太平洋艦隊の広報は、この飛行はあらかじめ計画されていたもので国際的な規則には反していないという声明を表したが、日本側はこれに不服を示した。しかし、これよりも演習の実施自体により大きな不服を表したのは中国である。
極東研究所、日本調査センターのヴァレリー・キスタノフ所長は、中国はそう考える根拠を少なからず有しているとして、次のように語っている。
「この演習はあまりに大規模に展開されている。日本側からは3万7000人の自衛隊員が参加し、米側からは1万人が参加している。これだけの規模の軍事演習は昨今行なわれていないと思う。その目的は明白だ。それは根拠地の、つまり太平洋において誰が主であるかを見せ付けるというものだ。」
キスタノフ氏はまた、演習は、日中の領土争いで懸案の釣魚諸島(日本名で尖閣諸島)が日米安保条約の第5項目の行動範囲に入っていることを中国側に思い知らせる目的で行なわれていると指摘する。これはつまり尖閣諸島が外国からの攻撃を受けた場合、米国は日本に軍事援助を行なうことを示す。
当初、軍事演習のシナリオは仮想の敵に襲われた無人島の解放作戦を練ることを想定したものだった。ところがこれが煽動して、懸案の島へ中国が、たとえばパラシュート部隊を降下させるなどの決定的行動をとりかねないことを危惧した日米は、この項目を演習計画からはずした。
キスタノフ氏は、それでも日米のこうした配慮は中国にはとどかなかったと考察している。中国をいらだたせているのは演習の規模であり、それに米の空母が参加しているという事実である。このため、演習はただただ、アジア太平洋地域における米中のライバル関係を今後も悪化させる結果につながってしまった。
中国国防相の報道官は北京で行なったブリーフィングで「中国は日本が他国を呼んで合同軍事演習を実施することに断固として反対する。こうした演習は地域の緊張悪化を招くだけだ」とする声明を表した。こうした一方で新聞「中国青年报」に掲載された記事は注目に値する。
記事では「沖縄以南の諸島の解放作戦」が演習項目からはずされたことで、釣魚諸島をめぐる緊張度が低くなったという指摘がなされた。と同時に、日米が演習をはずしたのは中国が軍事行為に出る姿勢を示したからであり、沖縄近海における「米軍の犯罪行為」は中国国内の反日感情を煽ってしまったとも書かれている。一方で「中国青年报」は中国が警戒および戦闘準備を怠ってはならないことも指摘している。
どうやらこの軍事演習は、中国人が懸案水域で強硬路線を選び、軍拡を行なうことを正当化したにとどまってしまったようだ。
ソース:The Voice of Russia
記事元:【軍事】日米合同軍事演習(鋭敏な剣)は中国を驚かしていない[11/07]